マウスピース矯正で歯茎が痛いのはなぜ?

マウスピース矯正中に歯茎が痛いトラブルが起きた場合、考えられる原因の一つは歯肉炎です。歯肉炎になると、歯茎が赤く腫れたり、歯磨きの際に出血しやすくなります。そのまま放置すると歯周炎へ進行し、歯を支える骨などの組織に影響を及ぼす可能性があるため、早めの対処が大切です。今回は、マウスピース矯正中に歯茎が腫れる原因と、予防法・対処法について詳しく解説します。

マウスピース矯正で歯茎が痛いときに確認したいこと

マウスピース矯正中に歯茎が痛い場合に確認したいポイントは、歯が動くことによる圧迫感か、歯茎に当たって生じる痛みかという点です。

痛みの原因を判断しよう

痛みの原因を判断するときは、次の点を確認しましょう。

  • 痛いのは歯か、歯茎か
  • 全体的に痛いか、一部分だけ痛いか
  • 交換直後に始まったか
  • 歯茎に赤み、腫れ、傷がないか
  • 歯磨きの際に出血していないか
  • 浮きや変形をしていないか

歯が動く痛みと歯茎の痛みの違い

マウスピース矯正では、新しいマウスピース(アライナー)を段階的に交換しながら歯へ矯正力を加えます。そのため、交換後に、歯が締め付けられるような感覚や、噛んだときに痛みが起きることがあります。

歯が動く痛み

新しいアライナーへ交換の直後に、歯全体が締め付けられるように感じる場合は、歯が動く過程で生じる一時的な違和感の可能性があります。装着を開始してから数日程度で徐々に落ち着くことが多いです。歯の周囲にある歯根膜や歯槽骨へ矯正力が加わることで生じます。矯正治療開始時や、交換後に起きやすい一時的な痛みの特徴を挙げます。

  • 複数の歯が締め付けられるように感じる
  • 新しいアライナーへの交換直後に始まる
  • 歯茎の表面に傷や腫れが見られない
  • 噛んだときに歯が浮くように感じる
  • 時間の経過とともに弱くなる

歯茎の痛み

歯茎の一部分だけが赤い、腫れている、切れている、出血がある場合、装置の縁による刺激や歯肉炎などが疑われます。マウスピースの形状や歯茎の炎症を確認してもらいましょう。軽い違和感であれば、器具と口腔内を清潔に保ち、刺激の少ない食事を選びながら様子を見るのも構いません。

  • マウスピースの縁に沿って痛い
  • 歯茎が赤くなっている
  • 白い傷や口内炎のような部分がある
  • 装着すると鋭い痛みが出る
  • 歯磨きや着脱時に出血する

強い痛み、腫れ、出血、膿、発熱、装置の浮きなどがあるときは、治療中の歯科医院へ相談してください。

マウスピース矯正で歯茎が痛くなる主な原因

マウスピース矯正で歯茎が痛くなる原因は一つではありません。痛みの場所や症状によって、考えられる原因が異なります。

①マウスピースの縁が歯茎に当たっている

マウスピースの縁が歯茎に触れ続けると、こすれによって赤みや傷、口内炎のような痛みが生じます。特定の部分だけが痛い、装着すると同じ場所に鋭い痛みが出る、白っぽい傷がある場合は、物理的な刺激が原因かもしれません。縁の位置や形状は、歯茎への刺激や炎症状態に影響する可能性があり、着脱時に強く擦っていれば要注意です。

②新しいマウスピースによる圧力が加わっている

新しい段階のアライナーへ交換すると、歯を計画した方向へ動かすための力が加わります。交換後の数日間は歯が押されるような感覚や、噛んだときに痛みが出る場合、歯茎の表面が傷ついたわけではなく、歯の周囲組織に力が加わることで生じる矯正特有の違和感です。歯茎に赤みや腫れがなく、複数の歯に均等な圧迫感を感じる場合は、このタイプの痛みでしょう。

③歯垢がたまり、歯肉炎を起こしている

マウスピース矯正は取り外せるため、口腔衛生を管理しやすいですが、装着前の歯磨きや器具の洗浄が不十分であれば、歯肉炎やむし歯のリスクがなくなるわけではありません。マウスピースを装着すると、歯の表面や歯と歯茎の境目が長時間覆われることから、食べかすや歯垢が歯に付着したままでは、細菌感染して歯垢が増えやすくなります。その結果、歯垢の増殖により、歯肉炎となり、歯磨きの際に出血してしまいます。次のような症状がある場合は歯肉炎が疑われます。

  • 歯茎が赤く腫れている
  • 歯磨きをすると血が出る
  • 歯茎がむずむずする
  • 口臭が以前より強くなった
  • 歯と歯茎の境目に汚れが残っている
  • マウスピースが正しくフィットしていない

マウスピースが歯から浮いている、片側だけ強く当たる、以前より装着しにくい場合は、歯の動きと治療計画にずれが生じている可能性があります。装着時間の不足や交換時期を自己判断で早めた場合、次のアライナーが合いにくく、適合が悪いまま無理に押し込むと、余計な刺激が加わります。前のマウスピースへ戻すべきか、現在の装置を継続すべきかは症例によって異なるため、治療中の歯科医院へ確認しましょう。

④着脱方法によって歯茎を傷つけている

マウスピースを勢いよく外したり、爪を歯茎へ食い込ませると傷つけるリスクが高まります。アタッチメントが付いている部分は外しにくいため、一か所から強く引っ張らず、奥歯側から左右を少しずつ浮かせて外しましょう。取り外しにくい場合は、専用のリムーバーを使用する方法もありますが、正しい使い方は装置や歯並びによって異なるため、歯科医院で説明を受けてください。

⑤もともとの歯周病や口内炎が悪化している

矯正開始前から歯肉炎や歯周病がある場合、矯正中に症状が目立つことがあります。また、睡眠不足、体調不良、ストレスなどが重なると、口内炎や歯茎の腫れが起こります。歯周病が進行している方は、歯周組織の治療や管理をしてから矯正治療を開始してください。歯がぐらつく方、口臭が強くなった方は、特に早めに診察を受けましょう。

⑥まれに素材が合っていない可能性がある

頻度は高くありませんが、マウスピースの素材に対する反応によって、歯茎や唇に腫れ、赤み、かゆみなどが現れる可能性はゼロではありません。舌まで腫れている、広範囲にかゆみがある、息苦しさを感じる場合は、通常の矯正による痛みとは異なります。装着をせず、速やかに歯科医院や医療機関へ相談してください。

マウスピース矯正で歯茎が痛いときの対処法

歯茎の痛みが軽度で、出血や大きな腫れがない場合は、次の方法で刺激を減らせます。ただし、対処しても改善しない場合や症状が強い場合は、セルフケアだけで済ませないようにしましょう。

痛む場所とマウスピースの状態を確認する

鏡を使い、痛む場所を確認します。

  • 歯茎の一部分だけが赤くなっていないか
  • 切り傷や口内炎のような白い部分がないか
  • 歯磨きのときに出血しないか
  • マウスピースの縁に変形や亀裂がないか
  • 装着したときに浮いている部分がないか
  • 痛みが歯全体なのか、歯茎なのか

症状が出ている部分をスマートフォンで撮影すると、歯科医院へ経過を伝えやすいです。

歯とマウスピースを清潔にする

食後は歯を磨き、デンタルフロスや歯間ブラシを使用し、マウスピースを装着してください。歯と歯茎の境目は歯垢が残りやすいため、強くこするのではなく、歯ブラシの毛先を細かく動かして磨くのがベストです。歯科医院から案内された方法で器具を洗浄し、熱いお湯は変形の原因になる可能性があるため避け、流水で洗浄しましょう。歯磨き粉の種類によっては研磨剤で細かな傷が付き、汚れが残りやすくなるため、使用方法を歯科医院へ確認すると安心です。

刺激の少ない食事を選ぶ

歯茎に傷や腫れがある間は、特定の飲食物は刺激となるため、注意してください。

硬い食べ物
辛い料理
酸味の強い食品
熱すぎる飲食物
アルコール

痛みが落ち着くまでは、やわらかく、温度変化の少ない食事を選びましょう。また、マウスピースを装着したまま糖分を含む飲み物を飲むと、糖分や酸が歯の表面にとどまりやすいです。装着中の飲み物は基本的に水のみとし、それ以外を口にした後は、歯と装置を清潔にしてから再装着することが大切です。

矯正用ワックスの使用を歯科医院へ相談する

マウスピースの縁が特定の場所に当たる場合、矯正用ワックスを一時的なクッションにすることが考えられます。ただし、ワックスは痛みの原因を根本的に解決するものではありません。マウスピースの形や適合に問題がある場合は、歯科医院での調整が必要で、自己判断で縁をハサミで切ったり、やすりで大きく削ると、適合や矯正力が変わります。加工する前に、必ず治療中の歯科医院へ連絡してください。

必要に応じて痛み止めについて相談する

交換直後の圧迫感がつらい場合、市販の鎮痛薬を使用可能です。ただし、今から挙げる状態に該当する方は自己判断で服用せず、歯科医師、医師または薬剤師へ相談してください。

  • 持病がある
  • 妊娠中または授乳中である
  • ほかの薬を服用している
  • 薬のアレルギーがある
  • 過去に鎮痛薬で体調を崩したことがある

痛みがあってもマウスピースを装着し続けるべきか

軽い圧迫感だけで、歯茎に傷や強い腫れがない場合は、基本的に歯科医師から指示された時間通りに装着してください。痛いからと何度も外したり、長時間外したままにすると、歯が計画どおりに動かず、再装着時にさらにきつく感じることがあります。では、無理に装着を続けるべきではないケースを挙げましょう。

  • マウスピースが歯茎へ食い込んでいる
  • 歯茎から出血している
  • 強い痛みによって装着できない
  • マウスピースが変形または破損している
  • マウスピースが大きく浮いている
  • 唇や舌まで腫れている

いずれかに当てはまれば、次の予約日まで我慢せず、歯科医院へ連絡してください。現在のアライナーを装着し続けるのか、前の分へ戻すのか、一時的に外すのかは、治療の進行状況によって異なります。自己判断で変更しないようにしましょう。

すぐに歯科医院へ相談したほうがよい症状

次のような症状がある場合は、通常の矯正による違和感以外の問題が起きている可能性があります。

症状 考えられる状態
痛みが数日たっても弱くならない 矯正による痛み以外の原因が考えられる
時間がたつほど痛みが強くなった 炎症や装置の不適合などの可能性がある
歯茎の腫れや出血が続いている 歯肉炎や歯周病の可能性がある
歯茎から膿が出る 細菌感染の可能性がある
強い口臭や嫌な味がある 歯茎の炎症や感染が疑われる
歯茎が大きく下がったように見える 歯肉退縮の可能性がある
歯が強くぐらつく 歯周組織への影響が考えられる
マウスピースの縁が歯茎へ深く食い込んでいる 装置の調整が必要な可能性がある
マウスピースが浮いて正しく装着できない 歯の動きと装置が合っていない可能性がある
顔まで腫れている 感染などの可能性がある
発熱や強いだるさがある 感染が広がっている可能性がある
息苦しさ、唇や舌の腫れ、広範囲のかゆみがある アレルギー反応などの可能性がある

矯正器具の装着後、痛みが数日以上続く場合や、歯茎が赤く腫れて痛む場合は、矯正歯科へ相談しましょう。顔の腫れ、発熱、飲み込みにくさ、息苦しさを伴う場合は、感染やアレルギー反応など緊急度が高い可能性があります。速やかに医療機関へ相談してください。

マウスピース矯正中の歯茎の痛みを予防する方法

歯茎のトラブルを予防するには、装着時間だけでなく、毎日の清掃と定期的な診察が重要です。

食後に歯磨きをしてから装着する
1日1回はデンタルフロスや歯間ブラシも使う
歯と歯茎の境目を丁寧に磨く
器具を毎日清潔に保つ
熱湯や強い力で装置を変形させない
指示された交換時期を守る
正しい方法でゆっくり着脱する
装置の浮きや亀裂を放置しない
歯茎の腫れや出血があれば早めに相談する
定期通院を中断しない

取り外せる矯正治療法のため口腔内を清掃しやすいですが、長時間装着するからこそ、汚れを残したまま装着しないことが重要です。毎日のセルフケアと歯科医院でのチェックを組み合わせれば、炎症や装置の適合不良を早期に発見しやすくなります。

よくある質問

マウスピース矯正で歯茎が痛いトラブルに関してよくある質問をまとめました。

マウスピース交換後の痛みは何日くらい続きますか?

新しい段階へ交換した後は、数日程度、締め付けられるような違和感が出ること多いです。ただし、痛みの強さや期間には個人差があります。数日たっても改善せず、痛みが強くなり、腫れや出血を伴う場合は、歯科医院へ相談しましょう。

歯茎に当たる部分を自分で削ってもよいですか?

自己判断で削ることはおすすめできません。削る範囲によっては、アライナーの適合や歯を動かす力に影響します。まずは痛む場所の写真を撮り、治療中の歯科医院へ連絡しましょう。歯科医師の指示により、ごくわずかな調整方法を案内される場合もあります。

歯茎から血が出ても矯正を続けられますか?

一度だけ軽く出血した場合は、歯ブラシや器具の着脱による刺激の可能性があります。しかし、繰り返し出血する、赤く腫れている、口臭が気になる場合は、歯肉炎や歯周病が疑われます。矯正を安全に進めるためにも、歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

痛いときはマウスピースを外して寝てもよいですか?

一晩中外すと、装着時間が不足し、歯の移動に影響してしまいます。軽い圧迫感であれば、原則として指示された装着時間を守りましょう。強い痛み、傷、出血、装置の変形などがある場合は、外したままにするかどうかを治療中の歯科医院へ確認してください。

マウスピース矯正中に歯茎が腫れるのはよくあることですか?

一時的な刺激によって軽い赤みや違和感が出ることはありますが、歯茎の腫れを矯正中だから仕方がないと放置するのは適切ではありません。歯垢による歯肉炎、マウスピースの適合不良、装置の縁による刺激などが考えられます。腫れが続く場合や繰り返す場合は、歯科医院で原因を確認してもらいましょう。

まとめ

マウスピース矯正で歯茎が痛い原因には、装置の縁によるこすれ、歯の移動に伴う圧迫感、歯垢の蓄積による歯肉炎、装置の適合不良、誤った着脱方法、もともとの歯周病などがあります。まずは、痛みが歯全体の圧迫感なのか、歯茎の一部分に生じた傷や腫れなのかを確認しましょう。

軽い症状であれば、歯とマウスピースを清潔にし、刺激の少ない食事を選ぶことで落ち着く場合がありますが、強い痛み、出血、腫れ、膿、装置の浮き、発熱などがある場合は注意が必要です。自己判断で器具を加工したり、交換順序を変えたり、長期間外したりせず、早めに治療中の歯科医院へ相談しましょう。